PLUS Report~民事信託編~PLUS Report

【PLUS Report ~民事信託編~第13回】受益者代理人について

『新しい相続・財産管理の方法~民事信託~』

第13回 受益者代理人について

受益者代理人は、受益者を支援・保護する上で重要な役割をもっています。
受益者代理人とは、その代理する受益者のために受益者の権利に関する一切の裁判上または裁判外の行為を有する者のことです(信託法138~144条)(受益権については、第11回に記載しておりますので、そちらをご覧下さい。)

受益者が適切に意思表示できないときの例としては、認知症を患っている場合や知的障がい、精神障がいを有する受益者のほか、受益者が未成年者である等が考えられます。受益者が適切に意思表示ができない、あるいは受益者が特定多数であったりする等、受益者に権利行使が難しい場合において、受益者代理人が受益者の権利の保護と信託事務の円滑な処理を図ることができます。
例えば、受託者が欠けたときに新たな受託者を選任するなど、受益者は信託を継続していく上で、時に重要な選択や意思表示をする場面が想定されます。そのようなときに、受益者が適切に意思表示ができないと信託を継続していくのに支障が起こる事態が生じます。そのような事態を避けるためにも、受
益者代理人を設けるかどうかの検討は非常に重要です。

受益者代理人は、受益者が有する受託者の監督にかかる事項と、信託に関する意思決定にかかる事項を有しており、受益者代理人が選任された場合、代理される受益者は信託法第92条の監視及び監督の権限を除き、権利を行使することができなくなります。もし受益者が元気なうちでこの権利行使に制限をかけないようにするためには、信託行為(契約、遺言等)に別段の定めを設けるなどの配慮が必要になります。このように、受益者が受託者を十分に監視監督ができない場合や、意思表示ができない場合に備えて受益者代理人の旨を定めておく必要があります。

受益者代理人を設ける場合は、信託行為において、必ず受益者代理人の選任に関する定めを置く必要があります。受益者代理人は、未成年者又は成年後見人、被保佐人は受益者代理人となることはできず、また、当該信託の受託者も受益者代理人となることはできません。それ以外であれば制限は無く、法人でもなることができます。
一旦就任した受益者代理人も、死亡や受益者代理人の後見開始、破産手続き開始の決定を受けた事により、受益者代理人の任務が終了することになりますが、そのような場合には信託法62条の規定が準用され、受益者代理人の選任が可能となります。
つまり、後任の受益者代理人を指定していればその定めに従い、その定めが無い場合や指定を受けた新受益者代理人が引き受けない場合は、委託者及び受益者は、合意によって新受益者代理人を選任することができます。もしこの合意ができない場合、利害関係人が裁判所に対し、新受益者代理人選任の申立てをすることができます。

(文責 : 司法書士 重信吉孝)


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