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【PLUS Report 創刊号2015年1月号】会社法改正と実務のポイント①(会社の機関 その1)
創刊にあたり
ご縁を頂戴しました皆様へ、商事法務チーム所属の司法書士より、会社等の法人法制に関するトピックスをはじめ皆様のお役に立てる情報を定期的にお届けしたく”PLUS Report”を創刊いたしました。
3・6・9・12 月を除いた年 8 回とし随時号外の刊行も予定しておりますので、お付き合いの程どうぞよろしくお願い申し上げます。
※ご説明・ご案内の便宜のため、あえて法令上のものと異なる用語・表現等を採用している箇所がございますので、ご海容の程よろしくお願い申し上げます。
会社法改正と実務のポイント① (会社の機関 その1)
平成 26 年 6 月 27 日に「会社法の一部を改正する法律案」(法律第 90 号、以下「改正会社法」という。)が公布され、公布日から 1 年 6 カ月を超えない範囲内で政令で定める日をもって施行されることとされました。現時点では、具体的な施行時期は公表されていないものの、平成 27年 4 月1日または 5 月1日付で施行されるのではないかという見方が有力です。本号では、会社法改正と実務のポイント①として、取締役や監査役などの株式会社の機関に関する改正点をピックアップして解説します。今回は社外役員をテーマに採り上げます。
<社外性の要件>
Point 社外性の要件の変更(厳格化と緩和)
☑「企業統治」いわゆるコーポレートガバナンスの見直しの観点から、社外性の要件として、親会社や兄弟会社の一定の地位にある者や当該株式会社の経営支配者でないことに加え、「親族要件」(一定の者の近親者でないこと)も追加されました。
☑他方で、社外性の要件加重との均衡から社外役員の人材確保の必要性等に鑑み、一部要件の緩和も併せて行われました。
(1)社外取締役
①社外性の要件に以下の点が追加されます(要件の厳格化)。
・親会社の取締役・執行役・支配人・その他の使用人でないこと
(改正会社法 2 条 15 号ハ)。
※親会社の (社外) 取締役による兼任ができなくなります。
・当該株式会社の経営支配者(自然人に限る)でないこと(同上)
*「経営支配者」の定義は省令(会社法施行規則)により定められます(50%を超える議決権を有する株主であること等が、改正案としてパブックコメントに付されています)。
・兄弟会社の業務執行取締役等でないこと(同条同号ニ)
*「業務執行取締役等」の定義は以下のとおりです(同条同号イ)。
=「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役~若しくは執行役又は支配人その他の使用人」
・経営支配者(自然人に限る)又は当該株式会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人の配偶者又は二親等以内の親族でないこと(同条同号ホ)。
②社外性の要件について対象期間が導入されます(要件の緩和)。
・その就任前 10 年の間に、当該会社又は子会社の業務執行取締役等でなかったことに限定されます。(同条同号イ)。
・ただし、その就任前 10 年内のいずれかの時において、当該株式会社又はその子会社の取締役・会計参与・監査役であったことがある者(業務執行取締役等であった者を除く)にあっては、それらへの就任の前 10 年間、当該会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないことが求められます(同条同号ロ)
*例えば、株式会社の業務執行取締役が、その退任から 10 年を経過しない間に監査役に就任していた場合、仮に上記の要件(10 年)を満たしていた=業務執行取締役を退任してから 10 年超経過していたとしても、社外取締役としての機能を十分に果たしうるほど、業務執行者からの影響が希薄化したということはできないと考えられました。
(2)社外監査役
①社外性の要件に以下の点が追加されます(要件の厳格化)。
・親会社の取締役・監査役・執行役・支配人・その他の使用人でないこと(改正会社法 2 条 16 号ハ)。
※親会社の (社外) 監査役による兼任ができなくなります。
・当該株式会社の経営支配者(自然人に限る)でないこと(同上)
*社外取締役と同じ趣旨です。
・兄弟会社の業務執行取締役等でないこと(同条同号ニ)
*社外取締役と同じ趣旨です。
・経営支配者(自然人に限る)又は当該株式会社の取締役・支配人・その他の重要な使用人の配偶者又は二親等以内の親族でないこと(同条同号ホ)。
*社外取締役と同じ趣旨です。
②社外性の要件について対象期間が導入されます(要件の緩和)。
その就任前 10 年の間に、当該会社又は子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人でなかったこと限定されます(同条同号イ)。
・ただし、その就任前 10 年内のいずれかの時において、当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、その監査役への就任の前 10 年間、当該会社又はその子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人であったことがないこと(同条同号ロ)
*社外取締役と同じ趣旨です。
~実務のポイント~
①社外取締役及び社外監査役の要件に関する改正については、改正会社法の施行後最初に到来する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは従前の例による(附則第 4 条)とされており一定の猶予が設けられておりますが、グループ内の兼任状況の精査・確認は速やかに対応されることが好ましいものと考えます。
②なお、金融庁及び東京証券取引所は、上場企業の行動指針を定めたコーポレートガバナンスコード(企業統治の原則)の原案として2人以上の社外取締役を置くよう求めることを盛り込んでおり、2015 年中に東京証券取引所の上場企業へ適用される見通しとなっていることから、既存の社外監査役を社外取締役に「スライド就任」させ監査等委員会設置会社へ移行する動きを促す要因ともなりそうです。
(文責 パートナー司法書士 森田 良彦)
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会社法改正と実務のポイント①(会社の機関 その1)