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【PLUS Report 2015年5月号】会社法改正と実務のポイント④(監査等委員会設置会社)

会社法改正と実務のポイント④(監査等委員会設置会社)

PLUS Report 前月号に引き続き、本年 5 月 1 日に施行された「会社法の一部を改正する法律案」
(法律第 90 号、以下「改正会社法」という。)のうち、新たな機関設計として導入された監査等委員会設置会社に関する改正点をピックアップして解説します。

1.新たな機関設計の創設

Point 監査等委員会設置会社制度の創設

業務執行者への監督機能を担う新たな機関設計として、従来からの監査役(会)設置会社と委員会設置会社(改正後の名称は「指名委員会等設置会社」)に加えて、監査等委員会設置会社制度が創設されました。

解 説

☑ 既存制度に対しては、下記のような指摘がされてきました。
①監査役は、代表取締役や業務執行者の選定及び解職を含め、取締役会決議における議決権を有していないため、監査役の監査機能の強化には限界がある。
②監査役会設置会社では、2名以上の社外監査役の選任が義務付けられているため、社外監査役に加えて社外取締役を選任することへの重複感・負担感がある。
③指名委員会等設置会社では、社外取締役が過半数を占める指名委員会や報酬委員会に、取締役候補者の指名や取締役・執行役の報酬の決定を委ねることへの抵抗感がある。
☑ 上記指摘に対応し、新たに創設された監査等委員会設置会社の特徴は、以下のとおりです。
①監査等委員会の構成員である監査等委員は取締役であるため、取締役会における決議事項について議決権を有する。
②2名以上の社外取締役を置く必要がある一方、監査役を置く必要がない(選任不可)ことから、社外監査役に加えて社外取締役を置く重複感・負担感がない。
③指名委員会や報酬委員会を置く必要がないことから、取締役(業務執行者を含む)自らが取締役候補者の指名や取締役の報酬に関する決議に参加することができる。

2.監査等委員会設置会社制度について

解 説

(1) 対象となる会社
☑株式会社であれば、大会社であるか否か、または公開会社であるか否かを問いません。
(2) 機関設計
☑次の機関を必ず置く必要があります。
①株主総会、②取締役会、③代表取締役、④監査等委員会、⑤会計監査人
☑一方、監査役は置くことができません。また、指名委員会等設置会社に置かれる執行役、指名委員会および報酬委員会を置くこともできません。
(3) 監査等委員
☑監査等委員は、取締役でなければなりません。
☑監査等委員である取締役は、株主総会の決議において、監査等委員である取締役以外の取締役と区別して選任されます。監査等委員である取締役の解任は、株主総会の特別決議によらなければなりません。
☑監査等委員である取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までであり、定款や株主総会の決議によっても任期を短縮することができません。一方、監査等委員以外の取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。
☑監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の選解任や報酬等について、監査等委員会の意見を述べることができます。
(4) 監査等委員会
☑監査等委員は3名以上であり、かつ、その過半数は社外取締役である必要があります。つまり、最低2名の社外取締役が必要となります。また、監査等委員である取締役は、業務執行取締役との兼任が禁止されます。よって、最低4名の取締役(監査等委員である取締役3名のほか、監査等委員である取締役以外の代表取締役となる取締役1名)を置く必要があります。
☑常勤の監査等委員を置くか否かは、任意です。
(5) 取締役会の権限
☑監査等委員会設置会社における取締役会の職務は、原則として次のとおりです。
①業務執行の決定、②取締役の職務の執行の監督、③代表取締役の選定および解職
☑以下のいずれかに該当する場合には、取締役会の決議により、重要な財産の処分及び譲受け等の一定の事項を除き、重要な業務執行の決定の全部または一部を取締役に委任することができます。
①取締役の過半数が社外取締役である場合
②取締役会決議によって重要な業務執行の決定の全部または一部を取締役に委任することができる旨の定款の定めがある場合
→この規律があることで、いわゆるモニタリング・モデル(業務執行者に対する監督を中心とした取締役会)をより強く指向した機関構成を採ることが可能となります。

3.実務のポイント

解 説

(1) 監査等委員会設置会社への移行
☑既存の株式会社が監査等委員会設置会社に移行するためには、株主総会において監査等委員会設置会社を置く旨の定款の変更をする必要があります。
☑上記の定款の変更に伴い、以下の点で対応が必要になります。
①取締役の任期は、定款変更の効力が発生した時に終了することから、定款変更決議とあわせて、株主総会において、監査等委員である取締役を最低3名(そのうち過半数は社外取締役)、監査等委員である取締役以外の取締役を最低1名選任する必要があります。
②監査役の任期も定款変更の効力が発生した時に終了し、かつ監査役を置くことができませんので、監査役を置く旨の定款の規定を削除する必要があります。
会計監査人を置く必要があるため、既存の株式会社が会計監査人を置いていない場合には、株主総会において、会計監査人を置く旨の定款の変更と会計監査人の選任をする必要があります。
(2) 監査等委員会設置会社の登記事項
☑監査等委員会設置会社については、以下が登記事項となります。
①監査等委員会設置会社である旨
②監査等委員である取締役およびそれ以外の取締役の氏名
③取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
④取締役会の決議によって重要な業務執行の決定の全部または一部を取締役に委任することができる旨の定款の定めがあるときは、その旨

(文責 : 司法書士 宮城 誠)

本レポートは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については各々固有・格別の事情・状況に応じた適切な助言を求めていただく必要がございます。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的な見解であり、当法人若しくは当グループ又は当法人のクライアントの見解ではありません。

 

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