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【PLUS Report 2016年5月号】連載『会社の登記と司法書士』 第2回 株式会社の増資手続

連載 『会社の登記と司法書士』

第2回 株式会社の増資手続

今月号は『会社の登記と司法書士』(執筆担当:司法書士 宮城 誠)の第2回です。「株式会社の増資手続」をテーマに、手続きのポイントについてご紹介いたします。

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1.株式会社の増資とは

増資とは、株式会社の資本金を増加させる手続きのことです。増資の方法には複数の方法がありますが、株式会社が新株を発行する「募集株式の発行」が一般的な増資の方法です。「募集株式の発行」にも2つの方法があります。1つは、既存株主に対してその持株比率に応じて新株を引き受けてもらう「株主割当増資」、もう1つは、既存株主であるか否かを問わず、特定の第三者に新株を引き受けてもらう「第三者割当増資」です。実務上は、既存株主が新株を引き受ける場合であっても、手続きが簡便なこと等の理由により、第三者割当増資を採用して増資手続きを行うことが多いので、今回は第三者割当増資の具体的な進め方をご紹介いたします。

2.第三者割当増資の手続

取締役会設置会社である非公開会社においては、第三者割当増資の手続きは、以下の流れで進めていきます。なお、「総数引受契約」(会社法 205 条 1 項)を締結するか否かにより、手続きの流れが異なります。

①総数引受契約を締結しない場合

STEP1 募集事項の決定
株主総会において、募集株式の数、募集株式の払込金額又はその算定方法、払込期日又は払込期間等の募集事項を決定します(会社法 199 条 1 項・2 項)。なお、株主総会において募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めた上で、具体的な発行決議は取締役会に委任することも可能
です(会社法 200 条 1 項)。

STEP2 募集株式の引受けの申込みをしようとする者への通知
STEP1 で決定した募集事項等の事項を募集株式の引受けの申込みをしようとする者へ通知します(会社法 203 条 1 項)。

STEP3 募集株式引受けの申込み
募集株式の引受けの申込みをする者は、引き受けようとする募集株式の数等を記載した書面を株式会社に交付して申込みをします(会社法 203 条 2 項・3 項)。

STEP4 募集株式の割当決議・割当通知
取締役会決議によって(定款に別段の定めがある場合を除く)、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者及びその者に割り当てる募集株式の数を決定します(会社法 204 条 1 項・2 項)。この割当てを受けた者が募集株式の引受人となります(会社法 206 条)。
また、申込者に対して、払込期日(又は払込期間の初日)の前日までに、割り当てる募集株式の数を通知する必要があります(会社法 204 条 3 項)。よって、増資手続きを完了させるまでには、最短でも2日必要となります。

STEP5 出資の履行
払込期日を定めた場合には、引受人は払込期日に出資の履行を行い、払込期日から株主となります。また、払込期間を定めた場合には、払込期間内において出資の履行を行い、出資の履行を行った日から株主となります(会社法 208 条 1 項・2 項・209 条)。

②総数引受契約を締結する場合

STEP1 募集事項の決定
上記①と同様の事項を決定します。

STEP2 総数引受契約の締結
会社と募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結します(会社法205 条 1 項)。募集株式を引き受けようとする者は、1名に限られておらず、複数名であっても構いません。
また、総数引受契約を締結する場合には、上記①の STEP2から STEP4までの手続きを省略することができますので、増資手続きを最短1日で完了させることが可能です。
募集株式を引き受けようとする者があらかじめ決まっており、かつ少人数である場合には、手続きを簡略化することができますので、総数引受契約を締結する方法による場合が多いです。

STEP3 総数引受契約の承認
平成 26 年会社法改正により、募集株式が譲渡制限株式である場合には、取締役会設置会社にあっては取締役会において総数引受契約の承認が必要となりました(会社法 205 条 2 項)。

STEP4 出資の履行
上記①と同様です。

(文責 : 司法書士 宮城 誠)

本レポートは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については各々固有・格別の事情・状況に応じた適切な助言を求めていただく必要がございます。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的な見解であり、当法人若しくは当グループ又は当法人のクライアントの見解ではありません。

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