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【PLUS Report 2016年7月号】連載「会社運営に役立つ法制度」 第4回 株主リスト 〜10⽉1⽇から会社の登記のルールが変わります〜

連載 『会社運営に役⽴つ法制度』

第4回 株主リスト 〜10 ⽉ 1 ⽇から会社の登記のルールが変わります〜

今月号は『会社運営に役立つ法制度』(執筆担当:司法書士・行政書士 小野絵里)の第4回です。
本年 10 月 1 日から会社の登記に必要となる「株主リスト」についてご説明いたします。

1.なぜ変わるのか?

今回の改正1の理由について、法務省の見解2では、「更なる商業登記の真実性の担保を図る必要がある」こと、「国際的にも,登記所において法人の所有者情報を把握して,法人の透明性を確保することにより,法人格の悪用を防止すべきであるとの要請がされている」こと、「関係者が事後的に株主総会決議の効力を訴訟等で争う場合等においても有益となる」ことが示されています。
会社の登記では、昨年 2 月に取締役等の就任(再任を除く。)の登記に住民票や運転免許証の写しなどの本人確認証明書(商業登記規則 61 条 5 項)が必要となる改正がされた一方、同年 3 月には代表取締役のうち少なくとも一人の住所が日本にあることが必要とされていた従前の取り扱いが変更され、グローバル化にあわせた規制緩和が行われました。今回の改正は、前述の本人確認証明書に係る改正に続き、登記の信頼性を確保するための規制強化といえるでしょう。

2.どう変わるのか?

2016 年 10 月 1 日以降に、株主総会の決議又は株主全員の同意を要する事項について登記を申請する場合には、「株主リスト」が必要となります。

□ 適⽤の対象
役員の変更(再任を含む。)、商号や事業目的の変更、募集株式の発行、合併・会社分割・株式交換などの組織再編、その他多くの株主総会の決議又は株主全員の同意を要する登記が対象です。

□ 適⽤の時期
2016 年 10 月 1 日以降に申請する登記が対象です。
2016年10月1日以前に株主総会の決議をしている場合でも、同日以降に登記申請する場合には、「株主リスト」が必要です4

1 商業登記規則等の一部を改正する省令(平成28年法務省令第32号)。以下、当該改正後の商業登記規則を「改正後の商業登記規則」という 。
2 「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見募集」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080117 に掲載の「商業登記規則等の一部を改正する省令案の概要」を参照(「」内は「商業登記規則等の一部を改正する省令案の概要」の抜粋)。
3 平成 27 年 3 月 16 日民商 29 号通知
4 平成 28 年 6 月 23 日民商 98 号通達、第 4「経過措置」

3.何を記載するのか?

□ 株主リストの記載事項(改正後の商業登記規則 61 条 2 項・3 項)
① 株主の氏名又は名称
② 株主の住所
③ 当該株主の有する株式の数及び議決権の数
④ 当該株主の議決権の数の割合5

□ 株主リストに記載する株主の範囲(改正後の商業登記規則 61 条 2 項・3 項)
株主全員の同意を要する事項の場合には、株主全員の記載が必要です。その他の場合には、議決権の数の割合が高い順から、以下の①②のいずれか少ない数の株主の記載が必要です。
① 議決権の割合が高い上位 10 名
② 議決権の割合が多い順に加算し、その割合が 3 分の 2 に達するまでの人数

□ 株主リストのサンプル
株主リストのサンプルが法務省より公表されています。
法務省 HP「「株主リスト」が登記の添付書面となります。」をご参照ください。
(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html)

4.今後に向けて 〜 株主名簿の⾒直しのきかっけに 〜

株式会社では、株主名簿を備え置き、株主が変わると、これを更新する必要があります。しかし、上場企業以外の多くの会社では、自社の株主名簿を整備なさっていないケースも多いようです。

「株主リスト」と「株主名簿」は、全く同じものではないものの6、普段から株主名簿で自社の株主情報を整理しておけば、これを基に「株主リスト」を作成することが可能です。

さらに、外部株主がいらっしゃる会社、自社株の承継を継続して進めていらっしゃる会社、第三者から買い受けられた会社など、利害が一致しない可能性がある株主がいる場合や、株主又は持株比率に変動が生じている場合には、株式の承継の経緯に係る誤解や紛争に備える意味でも、この機
会に株主名簿の運用を見直されることには、大きな意義があるといえるでしょう。株主は、役員とは異なり、法務局の登記簿にも記録されませんし、会社の株主が記載された公的機関が発行する証明書は、現段階では存在しないのです。

(文責 : 司法書士・行政書士 小野絵里)

5 株主全員の同意を要する事項の登記を申請する場合には、「当該株主の議決権の数の割合」を記載する必要がありません(改正後の商業登記規則 61 条 2 項)。
6「株式取得日」や「株券番号」(但し、株券を発行している場合のみ)は、株主名簿の記載事項ですが、『株主リスト』の記載事項ではありません。一方、「議決権の数」「議決権の数の割合」は、株主名簿の記載事項ではありませんが、「株主リスト」の記載事項です(但し、「議決権の数の割合」について、株主全員の同意を要する事項の登記の申請をする場合を除く。)。

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