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【PLUS Report 2016年11月号】連載「会社運営に役立つ法制度」 第5回 海外に書類を提出するとき 〜公印確認とアポスティーユ〜 

連載 『会社運営に役立つ法制度』 

第5回 海外に書類を提出するとき 〜公印確認とアポスティーユ〜 

今月号は『会社運営に役立つ法制度』(執筆担当:司法書士・行政書士 小野絵里)の第5回です。


現在、一部で反グローバル化の機運の高まりが見られるものの、海外からの資金・人材の受入れや 海外事業者との取引といったビジネス上の海外との接点は、今後も増加していくことが予想されます。 

海外とのビジネスを進める際には、海外の官公庁や取引先から、自社の会社謄本や議事録などの書 類の提出を求められる場合があります。この場合、提出する書類について、特別の証明手続きを求められるケースが見受けられます。 

そこで、今回は『海外に書類を提出するとき ~公印確認とアポスティーユ~』と題し、提出する書類に係る証明手続きについて解説します。 

1.なぜ証明が求められるか。 

会社謄本などの公文書を海外に提出した場合、提出を受けた海外の官公庁や事業者では、正当な機関が作成した書類であるか否かを判断することが難しいため、これを確認する制度として、後述する「領事認証制度」が国際慣行として確立されています。なお、日本は、領事認証制度を採用していないため、例えば法務局に海外の官公庁作成の書類を提出する場合でも、原則として、後述する特別の証明手続きをしなくても、添付書類としての効力を認める取扱いがされています1。 

2.どんな手続きが必要か。 

□ 証明の種類 
一般的な方法は、「領事認証制度(公印確認+領事認証)」と「アポスティーユ」です。いずれの証明が必要か、あるいは提出先の日本大使館や総領事館の証明が必要かなどの取扱いは、提出先の意向によって異なるため、まずは提出先に必要な証明の種類を確認なさることをお勧めします。 

□ 領事認証制度(公印確認+領事認証) 
①外務省において公文書に押印された印鑑が正当なものである旨の「公印確認」を受けた上で、②駐日大使館又は総領事館において「領事認証」を受ける方法です。

□ アポスティーユ 
前述の領事認証制度が煩雑であるため、「外国公文書の認証を不要とする条約」(ハーグ条約)の加盟国(地域)に提出する場合に限って認められた簡易な方法です。外務省で「公印確認」ではなく、「アポスティーユ」(付箋による証明)を受けることにより、「領事認証」が不要となります。
ハーグ条約の加盟国(地域)は、外務省 HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000610.htmlで確認することが可能です。 

1 登記研究617 148 頁「登記簿 日本に登記のない外国会社を登記権利者とする所有権移転登記について」 

3.私文書と東京・神奈川・大阪の特例

会社謄本などの公文書の英訳や株主総会議事録・取締役会議事録などの私文書は、そのまま公印確認やアポスティーユを受けることができません。原則として、あらかじめ、1公証役場で「公証人の認証」を受け、2当該公証人の所属する法務局で法務局長による「公証人押印証明」を受けた上で、外務省での「公印確認」又は「アポスティーユ」を受けることとなります。 

一方、これらの手続きでは、公証役場、法務局、外務省(公印確認の場合には、更に、駐日大使館又は総領事館)と、多くの機関での手続きが必要で煩雑であるため、一部の公証役場では、これらの手間を省く便利なサービスが提供されています。
本レポート執筆時点において、埼玉・茨城・栃木・群馬・千葉・長野・新潟・静岡では、①「公証人の認証」とあわせて、②法務局長による「公証人押印証明」を、公証役場でまとめて取得することが可能です2。 
さらに、東京・神奈川・大阪では、①「公証人の認証」と、②法務局長による「公証人押印証明」だけではなく、本来は外務省で取得する「公印確認」又は「アポスティーユ」も、公証役場で取得することができるワンストップーサービスが提供されています3
九州各県を含む上記以外の都道府県の公証役場では、これらのワンストップサービスを利用する
ことはできません。地元企業の海外展開の環境を整える観点から、今後のニーズに応じた運用改善が望まれる点といえるかもしれません。 

(文責 : 司法書士・行政書士 小野絵里) 

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第5回 海外に書類を提出するとき ~公印確認とアポスティーユ~