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【PLUS Report 2017年2月号】連載『会社の登記と司法書士』第4回 相続人等に対する売渡請求制度について
連載 『会社の登記と司法書士』
第4回 相続人等に対する売渡請求制度について
今月号は『会社の登記と司法書士』(執筆担当:司法書士 宮城 誠)の第4回です。
オーナー株主の相続発生時に株式を後継者へ円滑に承継させるため(事業承継対策)、また少数株主の相続発生時に株式の分散を防ぐため(少数株主対策)の手法の一つとして、「相続人等に対する売渡請求」の制度があります。今月号においては、この制度の概要や導入にあたっての留意事項などをご紹介いたします。
1.相続人等に対する売渡請求制度とは?
☑株式の譲渡制限規定を設けている株式会社は、株主が売買等により株式を譲渡する際には、株式会社の承認を受けなければなりません。これは、株式会社にとって必ずしも好ましくない者が株主となって権利行使することを防止するための制度です。
☑一方、株主に相続その他の一般承継が生じた場合には、株式の譲渡制限規定を設けていたとしても、株式会社の承認を受けることなく当然に当該株主の相続人等に権利義務が承継されます。
そうなると、株式の譲渡制限の制度趣旨を徹底することができません。
☑そこで、株主に相続その他の一般承継が生じた場合においても、株式会社が当該株主の相続人等が取得した株式の売渡しを請求することを可能とすることで、株式の譲渡制限の制度趣旨を相続その他の一般承継が生じた場合にも及ぼすための制度が、「相続人等に対する売渡請求」の制度です。
2.相続人等に対する売渡請求の制度の導入
☑株主総会の特別決議により、相続人等に対する売渡請求の規定を設ける定款変更を行います。
なお、非公開会社に限らず、公開会社であっても譲渡制限株式についてこの規定を設けることができます。
☑相続人等に対する売渡請求に関する定款の定めについては、登記は不要です。
☑相続人等に対する売渡請求による自己株式の取得にも会社法第 461 条の財源規制があります。
☑定款の規定例は、次のとおりです。
(相続人等に対する売渡請求)
第○条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
3.売渡請求の流れ
(1)株主総会の特別決議
☑相続人等に対して売渡請求をしようとするときは、その都度株主総会の特別決議において、売渡請求の対象となる株式数や株主の氏名・名称を定めなければなりません。
(2)売渡請求
☑株主総会の決議にしたがって、株式会社は、相続その他の一般承継があったことを知った日から 1 年以内に限り、相続人等に売渡請求をすることができます。
☑株式会社は、いつでも売渡請求を撤回することができますが、売渡請求を受けた相続人等は、これを拒否することはできません。
(3)売買価格の決定
☑売買価格は、株式会社と相続人等との協議によって定めます。また、売渡請求の日から 20 日以内に裁判所へ価格決定の申立てをすることができます。協議を行わずに裁判所へ申立てをすることも可能です。
4.導入にあたっての留意事項
☑売渡請求の決定をする株主総会において、売渡請求の相手方である相続人等には、議決権がありません。そのため、例えばオーナー株主に相続が発生した場合、少数株主のみの株主総会決議によって、オーナー株主の相続人に対して売渡請求を決定することが可能となります。
☑その結果、オーナー株主の相続人が会社から完全に排除されたり、持株比率が減少することで会社の支配権を失う可能性があります。つまり、オーナー株主の相続を契機として、会社の「乗っ取り」に合うというリスクが否めません。
☑この「乗っ取り」リスクに対処する手段は、現行法上明確ではございませんので、相続人等に対する売渡請求の制度の導入にあたっては、このリスクについて検討した上で判断することが重要かと思います。
(文責 : 司法書士 宮城 誠)
本レポートは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については各々固有・格別の事情・状況に応じた適切な助言を求めていただく必要がございます。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的な見解であり、当法人若しくは当グループ又は当法人のクライアントの見解ではありません。連載『会社の登記と司法書士』
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第4回 相続人等に対する売渡請求制度について