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【PLUS Report 2017年5月号】連載「ヘルスケア~医療・介護法制シリーズ」 *改正社会福祉法 ~社会福祉法人制度に焦点を当てて(前編)

連載企画 『ヘルスケア~医療・介護法制シリーズ』

*改正社会福祉法~社会福祉法人制度に焦点を当てて(前編)

PLUS Report では執筆者担当毎の連載企画をスタートさせ、司法書士・医療経営士(2級)森田良彦にて、医療・介護を中心としたヘルスケア分野の法制度に関するトピックスを担当しております。

今月号では、本年4月1日に全面施行されました社会福祉法について、社会福祉法人にスポットを当て同法人の「生い立ち」から制度変遷の経緯、今般の社会福祉法人制度改革の概要についてお話したいと思います。

PLUS Report では、本誌をより充実させ皆様に有益な情報を発信していくため、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。採り上げますテーマなどお気軽にご意見やご要望をお寄せ頂けましたら幸いです(PLUS Report 事務局 plus-report@plus-office.com)。

1.社会福祉法人制度の制定の背景

(1)社会福祉事業法(現・社会福祉法)の成立
社会福祉法の前身である社会福祉事業法は昭和 26 年(1951 年)に制定され、社会福祉法人はその中で旧民法第 34 条に基づく特別法人として設けられました。
GHQの強い意向により政府が補助金支出を通じて社会福祉に対する責任を民間へ転嫁することを防止するため、憲法において第 89 条(「公金その他の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」)が規定された一方、戦後の生活困窮者や母子家庭、孤児等を救済する施設を整備するためには民間を活用することが不可避であったことから、「公の支配」に属することを条件として社会福祉法人制度が創設されました。
法人格の性質としては、法人財産に持分が無く、剰余金の配当も行われず、解散後の残余財産も他の社会福祉法人等(最終的には国庫)に帰属する非営利型法人で、所轄庁(自治体)の管理の下法律上社会貢献義務が課されている半面で税制優遇措置がとられています。

(2)社会福祉法人を取り巻く状況の変化
制度スタート当初は戦後窮状の下救貧・保護事業が専らで、多くは地域の篤志家による寄附により成立・運営され、貧困者が主な事業の対象とされました。当時の福祉の提供は行政の「措置」(=対象者が福祉を受ける要件を満たしているか否かを、行政が判断し費用を拠出すること)であったことから、社会福祉法人はその「措置」の受け皿として機能し、厳しい規制=「公の支配」に置かれ社会貢献義務が課される一方、社会福祉法人が施設建物を整備する場合(当時は施設を
中心とした福祉提供体制でした)、その費用の合わせて4分の3が国及び地方自治体から補助され、更に収益事業を除き課税を免除されていました。

その後戦後の復興・高度経済成長により国民の生活が豊かになるにつれ、社会福祉のあり方も貧困者救済を専らとするものから、国民全体が享受できる福祉サービスの提供へと変遷を遂げた結果、次のような事象が生じました。
①福祉を提供するサービス主体の多様化
・行政・社会福祉法人が中心であったものが、NPO 法人や医療法人等他類型の非営利法人をはじめ、一般企業も事業として福祉サービスを提供するようになった。
②「措置」から「契約」へのシフト
・「措置」=行政の判断による福祉サービスの利用者の決定から「契約」=福祉サービスの提供者と利用者との合意に基づく利用者本位・自己決定による福祉サービス利用へとシフトしていった。

さらに、医療技術の進歩、ノーマライゼーション概念の浸透、経済の低成長時代の長期化、少子高齢化の加速、地域社会や家族、企業における相互扶助機能の低下等も相俟って、専ら施設型であった福祉サービスも、新たなサービスの進展によりその提供内容も多様化しました。

このような状況の変化に伴い、規制改革の対象のひとつとして社会福祉法人のあり方が問い直され、民間企業との競争条件の均一化(イコールフッティング)の議論が起こり、社会福祉施設への補助金についても見直しが行われました。加えて、社会福祉法人の経営者やその一族による財産の私物化や横領、不適正な会計処理等の不祥事が頻発したことや、ほぼ同時期に公益法人の制度改革が行われたこと等を受け、社会福祉法の改正の大きな柱のひとつとして、社会福祉法人制度の改革が位置付けられました。

2.社会福祉法人制度の改革の概要

(1)改革の3つの視点
今般の社会福祉法人の制度改革の視点は、次の3つです。
①公益性・非営利性の徹底
②国民に対する説明責任の履行
③地域社会への貢献

(2)改革の中心となる3つの取組み
上記の3つを実現させるための具体的な施策として、①経営組織のガバナンスの強化 ②事業運営の透明性の向上 ③財務規律の強化 が図られました。以下にそれぞれの内容をみてまいります。

①経営組織のガバナンスの強化
<ポイント>
*今般の社会福祉法人のガバナンス強化においては、医療法人の組織モデルが全面的に採用されました。表面的には、社会福祉法人が医療法人と同じ厚生労働省の管掌である一方で、第7次医療法改正において医療法人に新たに取り入れられた組織モデルは、いわゆる一般法
人(一般社団法人・一般財団法人)のそれに全面的に依拠しています。そしてその一般法人の組織モデルは、会社法の株式会社(株主総会・取締役(会)・監査役(会)・会計監査人)の枠組みが大きく採り入れられています。株式会社は営利法人であり社会福祉法人・医療法人・一般法人はいずれも非営利法人でその性格は大きく異なりますが、法人や事業を適正に運営・管理するための組織モデル=統治機構という観点からは、営利・非営利を問わず通底するものがあるといえます。

(ア)評議員・評議員会
・任意設置の諮問機関であった評議員会を必置機関とし、法人運営の基本ルール・体制に関わる重要事項の決定のほか理事・監事等の選解任や報酬決定に関する権限を持つことにより、事後的に法人運営を監督する機関として位置付けられました。
→株主総会に役員の選解任や定款変更、合併・分割等の承認等重要な権限が専属的に付与されていることをイメージしていただければと思います。
※ただし、株主は法人のオーナーであり、株主が株主総会を通じてその権限を行使した結果について株主が法人に対し法的な責任を負うことはありませんが、評議員は、理事や監事と同様法人とは委任の関係にあるため、法人に対する善管注意義務や理事や監事と同様の任務懈怠責任を負うこと等が根本的な相違点です。
・評議員会による理事等の監督機能を担保するため、評議員は、理事、監事、会計監査人及び法人の職員との兼務が禁じられています。また、各評議員・役員と特殊関係に当たる者の評議員への就任が制限されています。

(イ)理事・理事会
・理事会を業務執行に関する意思決定を行う必置機関として位置付け、理事及び理事長に対するけん制機能を付加しました。また、理事(会)の職務・権限に加え、理事の負うべき義務及び責任の法律による明文化が図られたことは、医療法人と同様です。
・法定最低員数は6名以上とされ、その資格要件として次に掲げる者が含まれていることが求められています。なお、次の一・二は、医療法人の理事について同旨の規定が置かれておらず、社会福祉法人の理事固有の要件です。
一 社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
二 当該社会福祉法人が行う事業の区域における福祉に関する実情に精通している者
三 当該社会福祉法人が施設を設置している場合にあっては、当該施設の管理者
・その他理事長の選定・解職や利益相反取引の承認等の理事会固有の権限については、医療法人の理事会と同様です(詳細は PLUS Report 2016.10 月号をご参照ください)。

(ウ)監事・会計監査人
・監事の法定最低員数は2名以上となり、社会福祉事業に関する識見を有する者及び財務管理について識見を有する者であることが必須とされました。また、監査の実効性を担保するため、法人の理事や職員、評議員との兼務は禁止され、各役員の3親等内の親族等特殊関係
にある者の就任も制限されています。
・会計監査人の設置は原則任意ですが、一定以上の事業規模を有する社会福祉法人は設置が義務付けられました(次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合)。
(1) 前年度の決算における法人単位事業活動計算書(第 2 号第 1 様式)中の「サービス活動増減の部」の「サービス活動収益計」が 30 億円を超える法人
(2) 前年度の決算における法人単位貸借対照表(第 3 号第 1 様式)中の「負債の部」の「負債の部合計」が 60 億円を超える法人

上記のほか、役員等又は評議員の社会福祉法人又は第三者に対する損害賠償責任に関する規定が置かれたことや、各会議体の議事録についてその作成の義務付け及び作成要領等の詳細が法令で定められたことも医療法人と同様です。

②事業運営の透明性の向上 ③財務規律の強化 につきましては、次編においてお話をさせていただきます。

(文責 : パートナー司法書士・医療経営士2級 森田良彦)

本レポートは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については各々固有・格別の事情・状況に応じた適切な助言を求めていただく必要がございます。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的な見解であり、当法人若しくは当グループ又は当法人のクライアントの見解ではありません。

連載「ヘルスケア~医療・介護法制シリーズ」
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改正社会福祉法~社会福祉法人制度に焦点を当てて(前編)