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【PLUS Report~ 2017年7・8月号】連載『会社の登記と司法書士』 第5回 株式分割と株式無償割当てについて
連載『会社の登記と司法書士』
第5回 株式分割と株式無償割当てについて
今月号は『会社の登記と司法書士』(執筆担当:司法書士 宮城 誠)の第5回です。
今回は、株式分割と株式無償割当てという2つの類似した制度を比較しながらご紹介いたします。
1.制度の概要
①1株あたりの価値を引き下げるときや、②合併や株式交換をする場合の比率を調整するときには、会社としては、株主に対して新たに払込みをさせることなく、持株数に応じて平等に株式を与え、発行済株式を増加させるニーズがあります。その方法として、会社法には、株式分割と株式無償割当ての2つの類似した制度が規定されています。
株式分割とは、発行済株式を細分化することであり、株式無償割当てとは、株主に無償で株式を割り当てることです。例えば、発行済株式を 10 倍にしたい場合、株式分割では、1 株を 10 株に分割することになり、株式無償割当てでは、1 株に対して 9 株を無償で割り当てることになりますが、いずれも発行済株式が 10 倍になるという結果は同じです。
2.株式分割と株式無償割当ての主な違い
(1)自己株式の取り扱い
株式分割では自己株式の数も増加しますが、株式無償割当てでは自己株式については割当てをすることができません。したがって、自己株式の数も増加させたい場合には、株式分割を採用することになります。
(2)自己株式の交付
株式分割では自己株式を交付することができませんが、株式無償割当てでは自己株式を交付することができます。
(3)基準日の設定
株式分割では基準日の設定が必要ですが、株式無償割当てでは基準日の設定は必ずしも必要ではないと解されています。なお、基準日については、原則として2週間前までに公告をしなければなりません。
(4)異なる種類の株式の交付
株式分割では同一の種類の株式数だけを増加させることができますが、株式無償割当てでは異なる種類の株式を割り当てることができます。
3.実務上のポイント
(1)株式分割・株式無償割当ての限界
いずれも発行可能株式総数が上限となりますので、上限を超えて発行済株式を増加させたい場合には、同時に発行可能株式総数を増加させるための定款変更が必要です。なお、定款変更には原則として株主総会決議が必要ですが、株式分割の場合に限り、株式分割により増加する株式の数の範囲内で発行可能株式総数を増加させるのであれば、取締役会決議(または取締役の決定)により定款変更が可能となる特則があります。
(2)株式分割・株式無償割当てに要する期間
株式分割では、基準日を定めることが必要であり、かつ株式分割に係る基準日についての定款の定めがない場合には、基準日の2週間前までに公告をしなければなりません。そのため、原則として株式分割の手続きが完了するまでには最短でも2週間以上を要することになります。ただし、株主全員の協力が得られるのであれば、定款変更をして株式分割の基準日を定款に定め、公告を省略するという方法により、期間を短縮することも可能です。
一方、株式無償割当てでは、基準日の設定は必ずしも必要ではないと解されていますので、
最短で1日あれば手続きを完了させることができます。
実務上は、自己株式を発行していない場合には、株式無償割当ての制度を採用するケースが多く見られます。
(文責 : 司法書士 宮城 誠)
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