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【PLUS Report 2017年10月号】連載「会社運営に役立つ法制度」 第7回 今こそ取り組む自社株対策
連載 『会社運営に役立つ法制度』
第7回 今こそ取り組む自社株対策 〜見直しのチェックポイント〜
今月号は『会社運営に役立つ法制度』(執筆担当:司法書士・行政書士 小野絵里)の第7回です。
自社株の集約や承継は、重要とは認識しつつも、先送りしがちな課題ではないでしょうか。
ご相続によって複数のご親族に自社株が分散している会社、協力会社からの出資を受け入れている会社、(特に持株会を設けずに)従業員による自社株の取得を奨励している会社など、現に経営者以外の株主が存在する場合もあるでしょう。
オーナー経営者と他の株主との利害は、常に一致しているとは限りません。普段は「もの言わぬ株主」であっても、ひとたび利害対立が表面化すると、法律上認められた株主の権利を主張することで、法廷闘争を含めた内紛に発展する可能性すら秘めているといえます。
そこで今回は、『今こそ取り組む自社株対策』と題し、オーナー経営者以外の株主が存在することの注意点について解説します。
1.他の株主から、法律どおりの権利を主張されるリスク
➢ 株主の主な権利は以下のとおり。要注意は「株主総会の議決権」です。
∎ 株主総会に参加して投票する権利(議決権)
∎ 配当を受ける権利
∎ 会社を閉じるときに残った財産の分配を受ける権利
株主は、原則として1株につき1個の議決権を持っています。株式会社では、取締役や監査役を誰にするか、役員の報酬をいくらまでにするか、決算書を承認するか、新規事業を開始するか(事業目的を追加するか)、増資するかなどの重要事項を決定するには、基本的に株主総会の承認が必要です。
➢ 100%掌握が安全確実。どうしても必要な場合でも外部は3分の1未満に。
株主総会の決議には、議決権の過半数又は3分の2以上の賛成が必要な場合がほとんどです(要件が加重される場合もあります)。どうしても外部の出資を受ける必要がある場合には、最低限この要件を満たす株式を掌握すること(≒外部に渡す株式は3分の1未満に抑えること)が経営権をグリップするための必須条件といえるでしょう。
➢ ごく少数の株式を保有する株主にも、見逃せない権利がある。
少数株主でも、解散の訴え提起権(10%)、株主総会招集請求権・会計帳簿の閲覧請求権・役員解任の訴え(3%)、株主総会提案権(取締役会がある会社では1%又は 300 個/取締役会がない会社では下限なし)など、保有割合に応じた権利を行使できる場合があります。
➢ 株主全員が同意しないと、原則通りの手続を省略できない。
会社法では、例えば、株主総会を開催するためには1週間前までに株主に招集通知を発送する必要があるなど、株主の利益を守るための様々なルールが決められています。しかし、これらのルールは、株主全員が同意すれば省略できるものがほとんどです。オーナー経営者やその配偶者だけが株主であれば、簡単に株主全員の同意を得られるけれども、株主が多いほど全員の同意を得ることが難しくなり、その結果、原則通りの厳格な手続が必要となってしまうケースもあります。
➢ 有限会社では、株主の人数の半数以上を掌握することも必須である。
有限会社には、おおむね株式会社と同様のルールが適用されます。ただし、株主総会の決議要件のうち、いわゆる「特別決議」には、有限会社に特有のルールがあります。
株式会社の「特別決議」の要件は、原則として、総株主の議決権の過半数を有する株主の出席及び出席株主の議決権の3分の2以上の賛成であるのに対し、有限会社の「特別決議」の要件は、総株主の半数以上で、かつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成です。
そのため、オーナー経営者が大半の株式を掌握していたとしても、株主の人数が多ければ、他の株主の賛成が得られないと特別決議ができない可能性もあるということになります。
2.他の株主の相続人に分散するリスク
多くの非上場会社では、株式を譲渡する場合に取締役会や株主総会の承認を要するとのルールを設けています。これは「株式譲渡制限」というルールで、会社の登記や定款に記録されています。「株式譲渡制限」を設けている会社では、基本的には、会社が関知しないところで、株式が譲渡され株主が変わることを防ぐことが可能です。
一方、株主が死亡し相続が生じた場合には、「株式譲渡制限」のルールは適用されません。
例えば、自社株を保有したまま退職した従業員が急逝し、配偶者と子供が自社株を相続した場合など、会社が関知しない間に、自社の株主が変わってしまう可能性も考えられます。
3.まずは始めることから
自社株対策は、多くの会社が抱える課題といえるでしょう。普段は緊急性を認識しずらい課題ではありますが、オーナー経営者の突然の引退、資本提携の解消や元従業員株主の相続人とのトラブルといった事態が生じてしまうと、途端に緊急で重要な課題に発展してしまいます。問題が起きてからの対策には、選択肢が限られてしまうことが多いものです。
本レポートを自社の状況を見直す参考としていただき、今こそ自社株対策を始めてみられてはいかがでしょうか。
(文責 : 司法書士・行政書士 小野絵里)
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連載「会社運営に役立つ法制度」
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第7回 今こそ取り組む自社株式 ~見直しのチェックポイント~