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【PLUS Report 2018年5月号】連載 『会社の登記と司法書士』

連載 『会社の登記と司法書士』

第7回 種類株式の内容とポイント~「議決権の行使」編~

今月号は『会社の登記と司法書士』(執筆担当:司法書士 丸山主税)の第7回として、前回に引き続き、「種類株式」の登記をテーマに、その具体的な内容として「議決権の行使」にスポットをあてて解説させていただきます。

1.議決権制限株式(議決権行使につき内容の異なる株式)導入の効果

議決権制限株式を取り入れる最大の効果としては、株式が複数の株主に分散している場合に、オーナー株主や親族など一定の株主に経営権を集中させることで、意思決定をスムーズに行えることがあげられます。この効果は、例えば、事業承継にあたって現オーナーが一定の影響力を保ったまま、株式を後継者に承継したり、外部の投資家から出資を募る必要があるといった場面で、ニーズに応じた柔軟な方策をとれる点で、特に有効であるといえます。
※ 公開会社(譲渡制限の付されていない株式を発行する会社)では、現に議決権の制限されている株式の割合が2分の1を超えた場合、対応措置をとる必要があるとされています。

2.具体的な株式の内容の検討

☑ 議決権行使の「対象」
議決権制限株式の内容としては、株主総会において全く議決権を持たない、いわゆる完全無議決権株式とすることが一般的に多く、最も馴染みのあるものといえます。
しかしながら、会社法の規定では、議決権制限の度合いや制限事項について、とくに指定されていませんので、例えば、『A種類株式を有する株主は、○○○○に関する事項については、議決権を有しない』のように、ある重要な決議事項を特定して制限したり、あるいは特定の事項に関してのみ議決権を与えるといった定め方もできます。また、種類株式を数種類に分けて、それぞれの議決権行使内容を異なる形で設計することも可能です。

☑ 議決権行使の「条件」
議決権の対象とは別に、ある一定の条件のもとに、議決権の行使を制限することも可能です。
または、ある条件が発生した場合に議決権の行使が可能とすることもできますし、条件の定め方も法定されておらず、柔軟な活用ができるといえます。ただし、条件の成否の判断や発生時期が不明確にならないよう、内容によっては注意が必要です。事例によりますが、登記の可否の観点から、事前に法務局との打合せ等が必要な場合もございます。

☑ 複数の議決権を持つことの可否
議決権の全くない株式を発行できるのであれば、複数の議決権(1株につき2議決権など)を持った株式は発行できるのでしょうか。この点については、会社法上、種類株式の「内容」として予定されているのは、議決権行使の対象であり、数の問題ではないと解釈されています。
したがって、複数議決権のある株式を種類株式として発行することはできないと解されます。

☑ その他の内容との組み合わせ
議決権制限株式としての機能をより充実させるためには、前回ご紹介したその他の種類株式の内容との組み合わせについても検討が必要といえます。
例えば、議決権を制限する代わりに、優先配当などのインセンティブを与えることや、相続の発生による株式の分散を防止するための取得条項を付けておくなどの設計が考えられます。

3.導入にあたっての留意事項

☑「種類株主総会」における議決権について
種類株式を導入し実際に発行した場合においては、種類株主の保護の観点に立ち、通常の株主総会とは別に『種類株主総会』が必要となるケースがございます。議決権制限株式として、株主総会では制限を受ける場合であっても、種類株主総会での議決権は原則として制限されません。


※ 上記 7.~13.の組織再編行為が、「簡易・略式組織再編」に該当し、株主総会が不要となる場合でも、下記に述べる定款の規定がないかぎり、この種類株主総会は必要となります。
なお、上記の大半については、定款で定めることによって、種類株主総会を不要とすることが可能であり、実際に種類株式の導入と合わせ、当該定めを入れることは一般的です。但し、上記
1.①~③ については、定款をもってしても種類株主総会は排除できませんので、注意が必要です。

☑「総株主の同意」について
下記のような特に重大な事項の決定については、株主総会における決議ではなく、株主全員の
同意が必要となる場合があります。稀なケースではありますが、議決権制限株式であっても存在を無視できないケースです。
○ 役員の損害賠償責任を免除する場合
○ 全ての株式に取得条項を付す場合または内容変更する場合
○ 自己株式取得にかかる会社法第 160 条(※)の規定の排除
(※買取対象の株式に自分の株式を含めるよう請求できる旨の規定)
○ 対価が持分会社の持分となる場合の組織変更

☑ その他株主による訴えの請求等について
会社法には、取締役等の責任を追求するための株主代表訴訟という制度や取締役の行為差止め、会社の行為の無効の訴えなど、株主保護のための規定が設けられています。これらの権利は株式の内容に関わらず、株主が単独で行使できることとされており、議決権を制限できたとしても、株主との一定の関係維持は肝要であるといえます。

(文責 : 司法書士 丸山主税)

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