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【PLUS Report 2018年7月号】連載「会社運営に役立つ法制度」

連載 『会社運営に役立つ法制度』

第9回 会社運営と成年後見 〜経営者が認知症になったら〜

先日閉会した本年度の通常国会では、成年被後見人等の欠格事由の見直しに関する「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案」が提出されました(閉会中審査の対象となっており、法案成立には至っておりません。)。この法案は、いわゆるノーマライゼーションの観点から、成年被後見人等であることが一定の士業・公務員・法人役員等の資格や職種、一定の営業許可の欠格事由に該当すると定める現行制度を改めることを目的とするものです。
判断能力の衰えの程度や経営への意欲は、同じ成年後見制度を利用する方であっても個人差があることが予想されるため、一律に欠格事由とするのではなく、個別の判断を可能とする見直しの方向性を妥当と考えますが、現実問題として、成年後見制度を利用する方が企業経営の舵取りを担うことは事実上困難なケースが多いといえるでしょう。
そこで今回は、経営者が成年後見制度を利用することになった場合について、会社法上のルールと課題を解説したいと思います。

2.オーナー経営者が認知症になった場合には、「誰が」自社株の議決権を行使するのかを確認する必要があります。

大株主であるオーナー経営者が認知症になり、判断能力があると言えない場合には、そのオーナー経営者が議決権を行使したことによって成立した株主総会決議については、有効であるかが争いとなる可能性を否定できません。なお、株主総会は、役員を選任したり、商号や事業目的を変更したり、合併などの組織再編をするなど、重要事項を決定する際に必要となります。

既に成年後見を開始している場合には、成年後見人が代理人として議決権を行使することができますが、保佐・補助・任意後見を開始している場合には、必ずしも、保佐人・補助人・任意後見人(以下「保佐人等」といいます。)が議決権を行使することになるとは限りません。保佐人等が本人の代わりに議決権を行使するためには、あらかじめ指定された保佐人等の代理権に株式の議決権行使が含まれているかを確認する必要があります。

3.まとめとして

本レポートでは、経営者が成年後見等の制度を利用する場合のルールを採り上げましたが、現実には、取締役として日々高度な経営判断を行い、かつ、株主として重要事項を決定する権限をもつオーナー経営者の判断能力の喪失は、企業にとって避けるべき異常事態といえるでしょう。そのような事態が現実になってしまう前の段階で、そして、自社に対する考えや思いを次の体制に反映できる段階で、承継対策を採ることが改めて重要といえるでしょう。

(文責 : 司法書士・行政書士 小野絵里)

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連載「会社運営に役立つ法制度」
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第9回会社運営と成年後見 ~経営者が認知症になったら~