PLUS Report~民事信託編~PLUS Report

【PLUS Report ~民事信託編~第11回】受益者・受益権についてPart2

『新しい相続・財産管理の方法~民事信託~』

第11回 受益者・受益権について Part2

受益権とは

受益者は受託者に対し権利を持っています。その権利の内容は,
「①信託行為(契約や遺言等)に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって,信託財産に属する財産の引き渡し,その他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(権利)」
「② ①の権利を確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利(受託者に対する監督にかかる権利)」
であり,受益者が有するこの2つの権利の総称のことを「受益権」といいます。
①について例を挙げると,
「月 10 万円を受益者に給付する(権利)」のというように権利が確定的に決まっている場合や,「期間中,1年ごとに信託財産増加額を金銭で給付する(権利)」というように,不確定であるけれども計算によって確定額が定まる権利もあります。
また,受託者の判断で,「受益者が○○をするのに必要な額を給付する」といったように,具体的内容を受託者の裁量とすることもできます。
②の権利については,信託行為によっても権利行使の制限をすることができないとしています(信託法92条)。

受益権の取得には,信託行為に別段の定めがある場合を除いて,受益者の意思表示等の特別な行為をする必要はなく,当然に受益権を取得します(信託法88条1項)。そうすると,信託の内容を知らない人が受益者に指定されることも考えられます。そこで受託者は受益者に指定された人が受益権を取得したことを知らない場合は,原則その人に対し,遅滞無く,受益者となった旨を通知しなければならないとされています。(受益者には受益者となった旨は通知しないという定めをすることも可能です。ただし,信託の効力発生に際し,受益者に対し課税がかかることがありますので,注意が必要です。)

受益権の譲渡・質入について

受益権の譲渡は,原則として自由に譲渡することができます。ただし,信託行為においてその譲渡が禁止されている場合や,受益権の性質上,譲渡することが許されないものである場合には,譲渡することができません(信託法93条)。
また,受益者はその有する受益権について,原則として,自由に質権を設定することができます。
ただし,信託行為において質権を設定することが禁止されている場合や,受益権の性質上,質権設定をすることが許されないものである場合には,質権設定をすることができません(信託法96条)。ただし,家族間での福祉型の民事信託を組成する場合は,一般的に受益権の譲渡や質権の設定を禁止する場合が多いです。

受益者連続型信託とは

受益者が死亡した場合等,次の受益者を定めておいたり,受益者を指定する権利や変更する権利を持つものを定めておいたりすることで,受益者を連続させることができます。このような受益者が連続する信託を受益者連続型信託といいます。遺言では,財産の承継先を指定するのは一代限りですが,信託の場合は財産の権利を二代,三代と指定することが可能です。ただし,受益者連続信託型信託については期限があり,信託開始から30年を経過後に新たに受益権を取得した受益者が
死亡した時点で信託は終了します。つまり,30年経過後は受益権の新たな承継は一度だけ認められます。(信託法91条)

~受益者連続型信託の活用事例~

①子がいない夫婦の場合に,自分の死亡後は配偶者に,配偶者の死亡後は配偶者の兄弟姉妹ではなく,自分の兄弟姉妹の子(甥っ子)に財産を承継させたいとき。
②再婚したあと,自分の死亡後は再婚相手に,再婚相手の死亡後は前配偶者との間の子に財産を承継させたいとき。
③会社のオーナーの場合に,自分の死亡後は長男に,長男の死亡後は長男の子ではなく,二男の子に事業を承継させたいとき。

(文責 : 司法書士 重信吉孝)

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