PLUS Report~民事信託編~PLUS Report
【PLUS Report ~民事信託編~第5回】不動産を平等に相続させたいが、共有状態は避けたいケース
『新しい相続・財産管理の方法~民事信託~』
第5回 不動産を平等に相続させたいが、共有状態は避けたいケース
相続財産のうち、不動産の割合が大きい場合は将来モメる可能性大!
相続人間で遺産分割協議を行う際、遺産が現金のみの場合は、比較的スムーズに協議が整いますが、不動産などの現金以外の遺産が多く含まれている場合、特に収益物件の場合は不動産ごとに価値や利便性、利回りが違うので、平等に分けることが難しく、協議が整わないことがよくあります。その場合は、分けやすくするためにしぶしぶ優良物件を売却せざるを得ない状況も出てくるかもしれません。
民事信託を使った将来の資産承継対策!
そこで民事信託を活用します。収益物件を将来承継させたい場合、収益物件の管理・処分権限を一人の受託者に任せ、将来は各相続人が受益者となり受益権(家賃収入を受け取る権利)を平等に共有することにします。もし、受益者の一人に相続が発生した場合でも、その相続人には受益権を承継させればよいので、相続によって不動産の名義が複雑になり、共有者の意思統一ができずに塩漬けとなることはありません。
【相談事例】
Xさん(70歳)は福岡市に賃貸アパートを3棟(共に収益物件)を所有しています。高齢なので、管理が大変になってきたので管理を今のうちに息子達に任せておこう考えています。将来は子ども3人に平等に財産を相続させたいと考えていますが、物件ごとにアパートの利回りや築年数が違うため、子どもたちそれぞれに一棟ずつ承継させるのはモメる原因になりそうですし、また物件の差額に見合うだけの代償資産をもっていません。
今後、収益物件の修繕や建替え問題も出てくると思いますが、将来の管理処分などの方針も含めて、兄弟間でモメないようにして欲しいと考えています。
【解決策】
Xさんは、三男Cさんのとの間で、賃貸アパートを信託財産とする信託契約を締結します。内容は、受託者を三男C、当初受益者をXさんとし、Xさんが死亡した後は、第二受益者を長男A、二男B、三男Cの三人(共に受益権は各3分の1ずつ)とします。将来三男Cが、独自の判断で収益物件の修繕や建て替え、換価分割ができるように信託契約に定めておきます。
【今回の信託スキーム】
・委託者:X
・受託者:三男C
・受益者:当初受益者X、第二受益者長男A,二男B、三男C(受益権各3分の1)
・信託財産:賃貸アパート3棟、現金
・信託期間:無期限
・残余財産の帰属先指定:信託終了時の受益者
信託を利用するメリット
・Xさんが委託者兼受益者なので、信託設定時の税金は登録免許税のみ。不動産取得税も譲渡所得税、贈与税も発生しない。
・Xさんが亡くなった後、家賃を平等に兄弟間で分けることができる。
・Xさんが認知症になっても、三男Cが受託者の権限で不動産を修繕、賃貸契約などの締結をすることができる。
・不動産の名義が受託者である三男Cとなるので、兄弟間に相続が発生しても複雑な共有状態となる事を防ぐことができ、売却がスムーズになる。
(文責 : 司法書士 重信吉孝)
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『新しい相続・財産管理の方法~民事信託~』
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