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【PLUS Report ~民事信託編~第4回】民事信託で、空き家対策をしよう! Part2

『新しい相続・財産管理の方法~民事信託~』

第4回 民事信託で、空き家対策をしよう! Part2

前回は認知症が原因で実家が空き家になってしまう例をあげてご説明いたしました。今回は不動産の共有が原因で起こる空き家問題についてお話致します。

実家が空き家になってしまう原因 ~不動産が共有名義~

共有名義の不動産を売却する場合は必ず共有名義人全員の合意が必要です。もし、共有名義人同士の仲が悪かったり、話しがまとまらなかった場合は不動産の売却ができなくなってしまいます。また、一部の名義人が行方不明や音信不通の場合、また認知症の場合も不動産の売却が難しくなります。このように不動産が共有名義の場合は、不動産が売却できずに空き家となってしまうリスクが高まります。

民事信託を使った共有名義の不動産の空き家対策!

そこで民事信託を活用します。共有名義の不動産を信託財産とする信託を設定し、信託財産の管理・処分権限を受託者に集約させ、共有者は受益権(信託財産から経済的利益を受け取る権利)を共有することにします。もし共有者の一人に相続が発生した場合でも、受益権を承継させればよいので、相続によって不動産の名義が複雑になることはありません。受託者が不動産を売却した場合は、受益権の割合によって売却代金から利益を交付してもらうことができ、共有者の意思統一ができずに空き家状態になってしまうことを防ぐことができます。

【相談事例】
長男A(75歳)、次男B(73歳)、三男C(70歳)は、親から承継した実家を兄弟で3分の1ずつの持分で共有しています。兄弟間では近いうちに売却をしようと話をしていますが、思い入れのある実家なので、なかなか売却の決断までには至りません。そんな中、最近Aの体調が良くありません。長男Aは娘Xがいますが、Xは結婚して海外在住でBCとは疎遠となっています。もし、長男Aに相続が発生すれば、売却をするのにAの相続人との協力が必要となりますが、よい見通しが立たないので、将来の為に今のうちに何か対策ができないか考えています。


【今回の信託スキーム】
・委託者兼受益者を長男A、受託者を三男Cの息子Yとします。
・信託財産はAの実家の持分3分の1。
・信託期間は実家の売却手続き終了までとする。
・信託契約で「長男Aの持分はYの裁量で換価処分できる」と定めておく。
・売却前に長男Aが死亡した場合は、第二受益者をXとする。
・信託終了時の残余財産の帰属権利者を信託終了時の受益者と定める。

信託を利用するメリット
・Aが委託者兼受益者なので、信託設定時の税金は登録免許税のみ。不動産取得税や譲渡所得税は発生しない。
・Aが意識不明や認知症になっても、Yが受託者の権限でBとCとともに不動産の売却手続きに参加できる。
・Aが死亡した場合でも、疎遠となっているAの娘Xの協力を経ずに不動産の売却手続きができる。
Aの持分だけでなく、BとCの持分も合せてYを受託者とする信託契約を結ぶと、将来のBとCの認知症対策としても効果的でしょう。

(文責 : 司法書士 重信吉孝)

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『新しい相続・財産管理の方法~民事信託~』
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