PLUS Report~民事信託編~PLUS Report

【PLUS Report ~民事信託編~第1回】民事信託を知らない人は時代遅れ!?

新連載 『新しい相続・財産管理の方法~民事信託~』

第1回 民事信託を知らない人は時代遅れ!?

今月より民事信託についての連載をさせて頂くことになりました。第1回執筆担当の重信です。
今、司法書士業界だけでなく、税理士や弁護士、金融機関や不動産業界でも民事信託の研修がよく行われています。(「もう民事信託の研修は飽きた・・・」なんて声もあるようです。)今年NHKで民事信託の特集が行なわれたり、一般の方向けのセミナーが行なわれているせいでしょうか、「民事信託をお願いしたいんですけど・・・」と訪ねてくるお客様もいらっしゃいます。

そんな民事信託についてですが、改めて誰かに聞かれた時にちゃんと簡潔に答えられますか?大多数の方は初めて民事信託について説明を聞いたときはチンプンカンプン。そう、私も初めはそうでした。まず、用語が難しい。権利関係が分かりにくい。イメージがしにくい。でも民事信託って、初めはシンプルに考えて頂ければそれでいいと思います。

父「息子よ、この100万円で母ちゃんの面倒を見てくれ。」
息子「はい、任せて!」

これがイメージできれば民事信託はひとまずOKです。特に難しくないですよね?

1.今、民事信託が注目されている理由

超高齢社会の到来(2025年問題)
急速に高齢化社会が進んでいく中、団塊の世代が75歳を越えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、かつて人類が経験したことがない時代に突入いたします。これが『2025年問題』です。厚生労働省の調べでは(※)、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症になると予想されています。※厚生労働省(2015)、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」

認知症になるとどのような問題が起こるのか、一般の方はご存じない方が多いでしょう。認知症のにより判断能力の著しい低下・喪失状態になると、本人の資産が自由に動かせなくなります。例えば、不動産の売買、担保の設定、孫への生前贈与や定期預金の解約など、たとえ本人が希望していたとしても、元気なうちに対策をしておかなければ、何もできなくなります。

元気なうちに家族に財産を託すことで、認知症のリスクを防ぐ

このように財産の有効活用ができなくなるのは大きなリスクです。事前に対策をしなかった認知症の方の財産を管理処分するとなると、成年後見制度を利用するしか方法がありません。しかし、成年後見制度は制度の趣旨から様々な制約があり、本人の財産を後見人の判断で家族の為に使う事ができないために、利用をためらう方も多くいらっしゃいます。このような成年後見制度が、認知症患者の方の財産管理制度とされていましたが、他にもこれを支える制度があります。それが民事信託です。

高齢者や障がいをもつひとの生活等の支援の為に信託を活用

高齢者にとっては、自分が先に旅立った場合に、残される配偶者のことが心配になります。同じような事は、障がい等を持った子どもがいた場合にも言えます。
このような高齢者や親は、自分が信頼している人に財産を託し、その財産で自分の亡き後にも配偶者や子が幸せに生活できるようになればと願うことでしょう。この願いを実現させるための財産管理や給付にかかわる制度が民事信託の制度なのです。

2.民事信託は「信じて託す」財産管理承継制度

民事信託とは、信頼のおける人に自分の財産を託し、一定の目的の為にその管理、処分をしてもらう制度のことをいいます。簡単に言うと、「だれかを信じて、あることを託す」ことです。
先ほどの例でいうと、

信じる人=息子
あること=母ちゃんの面倒を見ること

となります。
基本的な民事信託の登場人物は、委託者、受託者、受益者の3名です。


このような3名の関係で中心的な役割を担う人が「受託者」です。受託者は信託される財産を善良な管理者として注意深く管理し、信託の目的を忠実に履行する義務が課せられます。もし、受託者が委託者の信頼を裏切り、義務に違反すると、受益者の保護が図れなくなり、信託そのものが崩壊してしまいます。そこで、信託法は受託者の義務と責任を詳細に規定しています。

民事信託の名前の由来

また、受託者の事務は、これを「業」として行う場合は、認可を受けた信託銀行や、信託業の免許のある信託会社でなければなりません。しかし、信託事務をを業として行わないのであれば、委託者の家族などの業者以外の者に行わせることができます。信託会社が業として行うことを「商事信託」と呼ばれるのに対して、業者以外のものが行う信託は「民事信託」と呼ばれています。当事者が身近な家族だったりすることが多い事から「家族信託」と呼ばれる事もあります。

3.最後に

民事信託を上手に使うことによって、今まで不可能だと思っていた相続対策・財産管理が可能となることがあります。次回からはこのステキな民事信託の便利な使い方を、具体例を使ってなるべく分かりやすくご紹介させていただきます。

(文責 : 司法書士 重信吉孝)

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