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【PLUS Report 2018年11月号】連載「会社運営に役立つ法制度」 第10回 実質的支配者情報の申告 ~設立時のルールが厳格に~
連載 『会社運営に役立つ法制度』
第 10 回 実質的支配者情報の申告~設立時のルールが厳格に~
2018 年 11 月 30 日以降、株式会社・一般法人を設立する場合には、法人の実質的支配者が暴力団員及び国際テロリスト等(以下「暴力団員等」という。)ではないことについて、公証役場への申告が必要となります。
これはマネーロンダリングやテロ資金供与のために法人が隠れ蓑のように利用されることを防ぐことを目的とした改正です。近年、商業法人登記の分野では、実務への影響が大きい制度変更が続いて行われています。
そこで今回は、この度の改正点と近年行われた主な改正点をまとめて解説いたします。
1.11/30(金)~、設立時に必要となる定款認証において、法人の「実質的支配者」の申告が必要となります。
①実質的支配者とは?
株式の議決権の保有比率が 50%を超える個人や、出資・融資・取引その他の関係を通じて事業に支配的な影響力を有すると認められる個人などが該当します。
②申告する内容は?
実質的支配者の住所・氏名・国籍・生年月日・性別・議決権割合等の情報、当該実質的支配者が暴力団員等への該当するか否かについて申告する必要があります。
申告書の様式は、日本公証人連合会の HP で公表されています。
(http://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/20181130.html)
③具体的な影響は?
i)申告書を提出しない場合や、実質的支配者が暴力団員等に該当すると判断された場合には、定款認証が認められないこととなります。
ii)認証された定款には、「嘱託人は、『実質的支配者となるべき者である何某は暴力団員等に該当しない。』旨申告した。」旨の文言が記載されます。
iii)申告内容について、「申告受理証明書」の交付を請求することができるようになります。
2.近年の変更ポイント
商業法人登記の分野では、法人や役員個人の実在性や登記の真実性の担保のための規制強化と、グローバル化への対応等の規制緩和に向けた制度の見直しが平行して行われています。
主な変更点は以下のとおりです。
3.今後の見通し
現在、内閣府規制改革推進会議において行政手続コストの削減の検討が進められており、商業法人登記は、重点分野の一つとして位置づけられています。
一方、マネーロンダリングやテロ資金供与等を防止するため、法人の透明性を高めることは、国際的な要請でもあり、我が国経済の信用力を向上させるにあたっての課題とされています。
商業法人登記の分野では、これらの双方の観点からの制度の見直しが、今後更に加速していくことが予想されます。
(文責 : 司法書士・行政書士 小野絵里)
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