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【PLUS Report 2019年2月号】連載 『会社の登記と司法書士』 第9回 公告の方法と登記について

連載 『会社の登記と司法書士』

第9回 公告の方法と登記について

今月は『会社の登記と司法書士』(執筆担当:司法書士 丸山主税)の第9回です。
決算期を迎える企業の多いこの時期ですが、私達の業務でも比較的よく関わるのが公告手続です。
会社法では、一定の場合に公告をすべき義務が定められており、その公告方法は登記事項にもなっております。普段あまり見直す機会のない登記事項ではありますが、実際の運用場面に照らし、改めて会社が行うべき公告とその手段についてご紹介させていただきます。

1.会社が行うべき公告の種類とは

公告の中でも馴染みのあるものとしては、毎年の定時株主総会後に行う決算公告ですが、他にも会社法で定める公告には、重要な影響を与える行為をする場合、債権者や株主が会社に対して異議申出や権利行使する機会を持たせるために、行うべきものなどが規定されております。
その種類は大別すると、以下の3つに分けることができます。
(1)債権者に向けたもの(ex:合併、会社分割、減資、解散など)
(2)株主に向けたもの(ex:基準日の設定、株券提出、その他通知に代わる公告)
(3)決算公告(※公告義務があるのは株式会社のみ)

2.会社法が定める公告方法とは

現在、公告方法として認められているものとしては、以下のものがあります。中小企業の多くで実際に採用されているのは、官報または日刊新聞への掲載による公告ですが、平成17年より新たに導入された電子公告についても、近年のインターネットの普及とともに、上場会社のみならず、自社HPを活用する会社が徐々に増えているのではないでしょうか。
公告の方法は、定款の必要的記載事項ではありませんが、定款に定めのない場合は、(1)の官報に掲載する方法により公告をすることになります。
また、会社法で規定された1.(1)の公告は、定款上の公告方法の定めにかかわらず、必ず「官報」に掲載をしなければなりません。
(1)官報に掲載する
(2)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する
(3)電子公告(インターネット上のウェブサイトのURLを登記します。)
上記3つのコストや利便性を比較して、それぞれの会社の現状や目的に照らし、最適なものを選択できるとよいでしょう。

~電子公告の特徴~

☑ 公告方法を電子公告と定めた場合には、予備的な公告方法として(1)または(2)の方法を定めることもできます。

当会社の公告は、電子公告の方法により行う。
http://www.XXXXXX.com/
当社の公告は、電子公告による公告をすることができない事故その他のやむを得ない事由が生じた場合には、官報に掲載してする。

☑(1)又は(2)の公告方法を採っている場合でも、決算公告のみを電子公告で行うこととすることが可能です。

当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。
貸借対照表に係る情報を受けるために必要な事項
http://www.XXXXXX.com/

☑ 決算公告を除いて、公告期間中は、電子公告調査機関による調査を受ける必要があります。

☑ 官報または日刊新聞紙による決算公告の場合には、貸借対照表の要旨の掲載で足りますが、電子公告の場合には、貸借対照表の内容の全部5年間公告しなければなりません。

3.債権者への個別催告の省略について(二重公告)
1.(1)の公告が必要な手続については、公告と合わせて債権者に対して個別に「催告書」を送付すべきものとされております。しかしながら、2.(2)(3)の公告方法を採っている
会社の場合は、当該公告と官報公告をどちらも行うことで、債権者への個別催告を省略することができます(二重公告と呼ばれます)。
債権者の数が多い会社の場合や、事務手続の負担を軽減したい場合など、実務上、この方法を採るケースは少なくありません。
二重公告によって手続を進めたいが、その時点で公告方法が官報となっている場合には、まず、公告方法の変更手続きを行うことになります。

4.公告方法の変更の手続

公告方法は定款の記載事項となっていますので、株主総会の特別決議による定款変更が必要となります。また、他の登記事項の変更と同様、2週間以内に登記をしなければなりません。
また、変更後の方法による公告は、登記がされた後に行われる必要があると考えられますので、実際に手続のスケジュールを立てる際には十分注意を要します。

(文責 : 司法書士 丸山 主税)

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