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【PLUS Report 2023年1月号】連載『企業法務の基礎知識』 第4回 組織再編とは?②~会社分割~

連載 『企業法務の基礎知識』 第4回 組織再編とは?②~会社分割~
事業の拡大や企業の再構築、事業承継による世代交代を目的とし、中小企業においても「組織再編」を活用する事例が増えています。本連載では、この中でも株式会社における「合併」、「会社分割」、「株式交換」、「株式移転」、「株式交付」をご紹介いたします。
第2弾となる今月号では、企業グループの再編成や事業再生にもよく利用されている「会社分割」について解説いたします。

1.会社分割のメリット
会社分割は権利義務の承継という点では合併と同様ですが、合併では、会社全体をまるごと承継させるのに対し、会社分割では特定の事業に関する権利義務のみを切り離して承継させることができます。また全事業に関して有する権利義務の全てを承継させる会社分割であっても、分割会社は消滅せず法人として存在します。
そのため事業持株会社を純粋持株会社化したり、M&Aの前提として事業を切り離す際になどにも活用される手法です。

2.会社分割の種類
会社分割には、会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を他の会社に承継させる「吸収分割」と、会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させる「新設分割」とがあります。
さらに分割対価をどこに取得させるかによって、「分社型分割」「分割型分割※対価が株式の場合のみ」に区分されます。

3.各種分割ケース
①「分社型分割」
株式や現金などの分割対価が分割会社自身に交付される会社分割のことをいいます。
親会社の事業を子会社に承継させたり、新たに事業会社を設立する場合などに活用されます。


②「分割型分割」
分割対価が承継会社の株式の場合、一旦分割対価を分割会社に交付し、直ちにその対価の全部を分割会社の株主に取得させることができます。
グループ会社間で事業を分ける場合などに適しています。

4.まとめ
・事業拡大のため、持株会社と事業会社を分けて生産性をアップしたい。
・資金調達や後継者不足問題の解決策として、M&Aで事業を売却したい。
・会社のスリム化を図るため、不採算事業を切り離して事業を継続したい。
上記のように、事業再編・事業再生や資金調達を目的として、会社分割は様々な場面で活用することができます。
ただし、その手続内容は複雑多岐にわたるため、法務、財務、税務、許認可と各方面からスキームを検討し、個別の事案に応じ適切に進めていくことが必要です。

(文責 : 司法書士 野見山香)

参考文献
金子登志雄 『組織再編の手続』<第2版> 法務企画から登記まで 商業登記全書(第7巻) 中央経済社、2018年

※PDFはこちら。
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