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【PLUS Report 2022年2月号】連載 『企業法務の基礎知識』第4回 組織再編とは︖①〜合併〜

連載 『企業法務の基礎知識』
第4回 組織再編とは?①~合併~


事業の拡大や企業の再構築、事業承継による世代交代を目的とし、中小企業においても「組織再編」を活用する事例が増えています。会社法第5章(会743条~同816条)では、「組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付」について規定されておりますが、本連載では、この中でも株式会社における「合併」、「会社分割」、「株式交換」、「株式移転」、「株式交付」について、会社法上必要な手続をご紹介いたします。
第1弾となる今月号では、最もイメージのし易いであろう「吸収合併」の手続について解説いたします。

1.合併とは?

合併とは、2以上の会社が契約により一つの会社になることを言います。
合併には、合併により消滅する会社の権利義務の全部を、合併後存続する会社に承継させる「吸収合併」と、合併により当事会社の全部が消滅し、その会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させる「新設合併」とがあります。
新設合併は既存の会社がすべて消えてしまい、税務上も吸収合併のほうが有利であることが多く、実務上あまり活用されていないため、今回は特に吸収合併の手続について取り上げます。


2.吸収合併手続の流れ


注① 株主総会開催日2週間前/株主に対する通知の日/官報公告掲載日又は催告の日のいずれか早い日から備置開始(~6ヶ月間)(会782条、同749条)。
注② 効力発生日の前日まで(会783条、795条)。
注③ 官報公告(決算公告をしていない場合は+決算公告)及び債権者への個別催告書の発送。債権者からの異議申出期間は1か月以上必要(会789条2項、799条2項)。
注④ 官報公告+定款所定の公告方法(日刊紙又は電子公告)による公告を行う場合は催告書不要(会789条3項、799条3項)。
注⑤ 反対株主の株式買取請求及び差止請求期間は効力発生日の20日前から前日まで(会784条の2、785条、796条の2、797条)。
注⑥ 株券発行会社の場合で、現に株券を発行している場合のみ該当(会219条1項6号)。※株券廃止を検討することも可能
※ 上記は一般的な手続きのみ挙げております。個別の事情によって必要な手続きは異なります。

仮に、令和4年4月1日を合併効力の発生日とした場合のスケジュール案をご紹介します。
(注)
申し込みから公告掲載までの最短日目安
決算公告が必要の場合 → 原則12営業日程度
決算公告が不要の場合 → 原則6営業日程度
※上記は一例です。個別の事情によって日程の変更や追加の手続が必要な場合があります。

吸収合併では、当事会社は常に債権者保護手続が必要となるため、最低でも約2か月の期間が必要となります。まずは官報公告の掲載タイミングを計るため決算公告が必要かどうかを確認し、合併効力発生日から逆算してスケジュールを組み立てることが必要です。

3.吸収合併契約書の記載事項

吸収合併契約においては、次に掲げる事項を定めなければなりません(会749条)。

①吸収合併存続会社及び吸収合併消滅会社の商号及び住所
②吸収合併存続会社が吸収合併に際して吸収合併消滅会社の株主に対して交付する合併対価があるときは、当該合併対価に関する事項
※合併対価は株式以外のものも認められる→「合併対価の柔軟化」
※合併対価を交付しないことも認められる→「無対価合併」
※株式を交付するときは、資本金等も必須記載事項
③②の場合は吸収合併消滅会社の株主に対する合併対価の割当てに関する事項
④吸収合併消滅会社が新株予約権を発行しているときは、当該新株予約権の新株予約権者に対する対価に関する事項
⑤④の場合は新株予約権者に対する合併対価の割当てに関する事項
⑥効力発生日

4.吸収合併ニュース

2022年には以下のような吸収合併のニュースが発表されています(一例)。

・㈱クスリのアオキが、㈱ホーマス・キリンヤ及び㈱フードパワーセンター・バリューを吸収合併(2022年3月1日効力発生)
・富士通㈱が、子会社である㈱富山富士通を吸収合併(2022年4月1日効力発生)
・㈱ヤマダホールディングスの子会社である㈱ヤマダデンキが、同じく子会社である㈱大塚家具を吸収合併(2022年5月1日効力発生)
・三菱地所㈱が、子会社である㈱ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツを吸収合併(2022年4月1日効力発生)
・ソフトバンク株式会社が、子会社である㈱ウィルコムを吸収合併(2022年4月1日効力発生)

5.まとめ

吸収合併をはじめ組織再編は、会社の組織と形態を大幅に変更する重要な行為です。合併と合わせて、存続会社の商号や目的などの定款変更や役員変更がセットとなるケースも多いです。
法務、財務、税務と各方面からスキームを検討し、個別の事案に応じ必要な手続きを確実に進めていくことが必要です。

(文責 : 司法書士 野見山香)

参考文献
金子登志夫 『組織再編の手続』<第2版> 法務企画から登記まで 商業登記全書(第7巻)中央経済社、2018年

※PDFはこちら。
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