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【PLUS Report 2020年10月号】連載 『企業法務の基礎知識』 第3回 株式会社の機関②

連載 『企業法務の基礎知識』

第3回 株式会社の機関②

旧商法下の時代と比べ、会社法の施行により、自由度の高い機関設計が認められるようになりました。
しかしながら会社を設立する場合、また機関設計を変更する場合などには、各機関の役割等を考慮のうえ、会社法の定めるルールに従い機関設計を検討する必要があります。
前号の機関設計のルールに続き、機関設計を検討するにあたっての各機関の役割をご紹介いたします。

1.それぞれの機関の役割

①株主総会
取締役会を置かない会社においては、会社法に規定される事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる(会社法295条1項)、株式会社の最高の意思決定機関。
取締役会設置会社においては、会社法に規定する事項(株式の消却、株式の分割、株式無償割当て、単元株式数の減少など)及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる(会社法295条2項)が、定款を変更するには株主総会の特別決議が必要となる(会社法466条、309条2項11号)。
②取締役
株式会社の業務を執行する機関(会社法 348 条 1 項)。取締役は株式会社を代表する(会社法 349条 1 項)が、代表取締役を定めた場合、その代表取締役が株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(会社法 349 条 4 項)。
③取締役会
3 人以上(会社法第 331 条 5 項)の全ての取締役によって組織され(会社法 362 条 1 項)、業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、代表取締役の選定等の重要な職務を行う機関(会社法 362 条 2項)。
④監査役
取締役及び会計参与の職務の執行を監督する機関(会社法 381 条 1 項)。
⑤監査役会
3 人以上の全ての監査役(うち半数以上は社外監査役)によって組織され(会社法第 331 条 5 項、390 条 1 項)、監査報告の作成や常勤監査役の選定、監査の方針等の決定を行う機関(会社法 390 条2 項)。
⑥会計参与
取締役と共同して、計算書類の作成を行う機関(会社法 374 条 1 項)。公認会計士もしくは監査法人、税理士もしくは税理士法人でなければならない(会社法 333 条 1 項)。
⑦会計監査人
計算書類を監査する機関(会社法 396 条 1 項)。公認会計士もしくは監査法人でなければならない(会社法 337 条 1 項)。
⑧指名委員会等設置会社の各委員会
各委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならない(会社法 400 条 3 項)。
・指名委員会...株主総会に提出する取締役及び会計参与の選任及び解任の議案の内容を決定する(会社法 404 条 1 項)。
・監査委員会...執行役及び取締役の職務の執行の監査及び監査報告の作成を行う(会社法 404 条 2項。)
・報酬委員会...執行役の個別の報酬等の内容を決定する(会社法 404 条 3 項)。
⑨執行役
指名委員会等設置会社の業務の執行を行う機関(会社法 418 条)。
⑩監査等委員会
取締役及び会計参与の職務執行の監査及び監査報告の作成、会計監査人の選任及び解任の議案の内容の決定等を行う機関(会社法 399 条の 2 第 3 項)。すべての監査等委員で組織され、取締役(その取締役の過半数は社外取締役)でなければならない(会社法 399 条の 2 第 1 項、2 項、331 条 6項)。

2.所有と経営の分離から見る機関設計

株式会社の制度上、会社を所有する者と会社を経営する者とが分けて考えられております。
「所有」にあたる組織が①株主総会であり、「経営」にあたる組織が②取締役、③取締役会及び⑨執行役です。

取締役会を設置すると、会社法上取締役会の決議事項として明記されている事項が原則として取締役会に一任されることとなり、株主総会は経営にあたらないため、監視の目を入れる必要が出てきます。そこで「監査」にあたるための④監査役が必要となります。
ただし取締役会設置会社であっても、会社の規模がそれほど大きくない(資本金 5 億円未満かつ負債総額 200 億円未満)非公開会社(株式の譲渡について会社の承認が必要)であれば、⑥会計参与を設置すれば監査役は不要となり、また監査役の権限を会計に関するものに限定することも可能です。

さらに会社の規模が大きくなり、大会社(資本金 5 億円以上または負債総額 200 億円以上)となると、さらに監視の目を強化するため⑦会計監査人が必要となります。
指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社においても同様に⑦会計監査人が必須です。

大会社かつ公開会社(株式の譲渡について会社の承認不要)となると、さらに「社外監査」も必要となり、社外監査役が必要な⑤監査役会を設置するか、もしくは社外取締役が必要な⑧指名委員会等または⑩監査等委員会を設置する必要があります。
なお、令和2年10月時点では施行日は未定ですが、令和元年12月4日、会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)が成立し、有価証券報告書提出会社(上場会社等)においては、社外取締役の設置が義務付けられることとなりました(新会社法327条の2)。

このように会社の性質・規模を踏まえた上で、ルールに則って機関設計を検討することが必要です。

 

(文責 : 司法書士 野見山香)

 

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