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【PLUS Report 2019年8月号】連載 『医療法人の法務』 第1回 医療法人と登記

連載 『医療法人の法務』

第 1 回 医療法人と登記

今回より新たに『医療法人の法務』(執筆担当:司法書士 竹井 研祐)と題しまして、医療法人に関わる法務を採り上げてまいります。
『医療法人の法務』の第1回目となります。今月号では「医療法人と登記」についてご紹介いたします。医療法人は、政令で定めるところにより、その設立、従たる事務所の新設、事務所の移転、その他登記事項の変更、解散、合併、分割、清算人の就任又はその変更及び清算の結了の各場合に、登記をしなければならない(医療法第43条第1項)とされており、登記事項は組合等登記令に定められています。以下、登記事項、登記申請手続及び登記完了後の届出について解説いたします。

1.登記事項
医療法人は次に掲げる事項を登記しなければなりません。(組合等登記令第2条第2項、別表)
1.目的及び業務
2.名称
3.事務所の所在地
4.代表権を有する者の氏名、住所及び資格
5.存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
6.別表の登記事項欄に掲げる事項(医療法人においては「資産の総額」)

上記の登記事項の中で定期的に登記をする必要がある事項は4.代表権を有する者の氏名、住所及び資格と6.資産の総額です。
医療法人の代表権を有しているのは理事長のみです。(医療法第46条の6の2第1項)理事長は理事の資格を有しているものから選出され(医療法第46条の6第1項)、理事の任期は2年を超えることはできないため(医療法第46条の5第9項)理事長の登記は少なくとも2年に1度はしなければなりません。
資産の総額は事業年度ごとに変わるため、資産の総額は1年に1度は変更の登記をする必要があります。(組合等登記令第3条第3項)

2.登記申請手続
医療法人の登記事項に変更があった場合は主たる事務所の所在地を管轄する法務局に、変更があったときから2週間以内に変更の登記の申請をしなければなりません。(組合等登記令第3条第1項)ただし、資産の総額の変更の登記は毎事業年度末日現在より、3ヶ月以内にすれば足ります。
(組合等登記令第3条第3項)資産の総額は事業年度末日時点のプラスの財産からマイナスの財産を引いた額です。資産よりも負債の額が多い場合は資産の総額金0円(債務超過額金●●●円)と記載されます。
医療法第93条第1号には医療法人の理事、監事若しくは清算人は医療法に基づく組合等登記令による登記をすることを怠ったときには20万円以下の過料に処すると規定されているため、登記事項に変更があった場合は法令の定める期間内に登記の申請が必要になってきます。

3.届出
医療法人が登記したときは、登記事項及び登記の年月日を、遅滞なくその主たる事務所の所在地の都道府県知事に届け出なければなりません。ただし、都道府県知事の認可を受けなければならない事項(『理事長』、『資産の総額』を除く登記事項)は登記の年月日を届出れば足ります。(医療法施行令第5条の12)

(文責 : 司法書士 竹井 研祐)

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