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【PLUS Report 2016年10月号】連載『会社の登記と司法書士』 第3回 株式の譲渡と株券
連載 『会社の登記と司法書士』
第3回 株式の譲渡と株券
今月号は『会社の登記と司法書士』(執筆担当:司法書士 宮城 誠)の第3回です。M&A や事業承継対策の手法の一つとして株式譲渡が多く利用されていますが、株式譲渡に際して株券につきどのように対処すべきかお問い合わせを受ける機会が少なくありません。そこで、「株式の譲渡と株券」をテーマに、特に株券発行会社であるが株券がない場合の対処法について簡単に紹介いたします。
1.株券発行会社に該当する場合
現行会社法においては、株券不発行が原則ですので、定款で株券を発行する旨の定めを置いた場合のみ株券発行会社となります。一方、会社法施行時(平成 18 年 5 月)に存在する株式会社は、株券を発行しない旨の定款の定めがある場合を除き、株券発行会社となります。しかし、多くの中小企業などでは、株券発行会社であったとしても、実際には株券がないケースが多く散見されます。
2.株式譲渡の効力要件
株券発行会社では、株券を交付しなければ株式譲渡の効力が生じませんので、株式譲渡には株券が必須となります。そのため、株券発行会社でありながら実際には株券がないという状況は、株式譲渡というスキームの成否に大きな影響を与えます。
3.株券がない場合の対応
株券発行会社において実際に株券がない場合とは、株券が発行されていない場合と株券を紛失している場合とに区別できます。それぞれの場合で株式譲渡を行うための対応が異なりますが、大まかな流れは下図のとおりです。
4.手続の概要
1.株券が発行されていない場合の対応
(1)株主からの株券発行請求
株式譲渡に際して株主が会社に対し株券の発行を請求し、発行された株券を交付して株式譲渡を行います。
(2)株券不発行会社への定款変更
①株主総会の特別決議、②効力発生日の2週間前までの株券を廃止する旨の通知・公告を行い、株券不発行会社への定款変更を行います。この場合、効力発生日をもって株券が無効となりますので、当該日以降の株式譲渡には株券の交付が不要となります。
2.株券を紛失している場合の対応
(1)株券不発行会社への定款変更
上記1.(2)と同様です。株券喪失登録手続や株券提出手続に比べて手続に要する負担感が少ないことから、実務的にはこの手続を採用するケースが多いです。
(2)株券喪失登録手続による株券の再発行
株券を喪失した株主が会社に対して株券喪失登録を請求すると、株券喪失登録がされた株券は株券喪失登録日の翌日から起算して1年を経過した日に無効となります。そして、会社は株券を再発行したうえで株式譲渡を行います。
(3)株券提出手続に伴う異議催告手続
①譲渡制限規定の設定、②株式併合、③全部取得条項付株式の取得、④取得条項付株式の取得、⑤組織変更、⑥合併、⑦株式交換、⑧株式移転の際に株券提出手続を行った場合は、それぞれの手続の効力発生日に株券は無効となります。そして、新たに発行された株券を交付して株式譲渡を行います。
(文責 : 司法書士 宮城 誠)
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