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【PLUS Report 2019年10月号】連載 『相続法改正』 第1回 遺産分割前の預貯⾦の払戻し制度の創設

連載 『相続法改正』

第 1 回 遺産分割前の預貯⾦の払戻し制度の創設

昨年の 7 月に相続法が見直され「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立し、本年から自筆証書遺言の作成要領や遺留分制度が変更されるなど一部施行されております。施行された制度の中から今回は、遺産分割前の預貯金の払戻制度の創設についてご紹介させていただきます。(執筆担当:司法書士 佐賀 達也)

1.本制度の概要

本制度が施行されるまでは、平成 28 年の最高裁の決定により、お亡くなりになられた方の預貯金は、原則として共同相続人全員の遺産分割協議が成立しなければ、払戻し手続きを行うことができませんでした。
しかし、お亡くなりになられた方の相続人方が負担する葬儀費用や配偶者の生活費などの資金需要が考慮されて、共同相続人全員の遺産分割協議の成立前でも各相続人が単独で一定額の払戻し(上限があります)を受けることができるようになりました。一定額を超える払戻しが必要な場合は、家庭裁判所に対する仮分割の仮処分の申立てが認められる要件が緩和されたため、こちらの制度の活用も今後期待されます。本稿では、家庭裁判所を経ない前段の払戻し手続きについてご紹介します。
※遺産分割前に払戻しを受ける一定額の上限は、相続開始時に被相続人が有する預貯金債権額×1/3×請求する相続人が有する法定相続分により算出される金額です。但し、1 つの金融機関につき 150 万円が上限になります。

(概要)夫が亡くなって、相続の手続きを行いたいところですが、長男と連絡がつかないため、遺産分割協議を行うことができません。しかし妻は、葬儀費用等の支払いにより預金が少なくなってしまったため、当面の生活費として一部でも早く夫名義預貯金の払戻しを受けたいと悩んでいるとします。

このような場合でも、従前は、夫の遺産について遺産分割調停という複雑な手続きを家庭裁判所で行い、家庭裁判所の判断(審判)が出るまでの数か月間、夫名義の預貯金の払戻しを受けることができませんでしたが、本制度により、妻は、A 銀行からは 100 万円、B 銀行からは 150 万円の払戻しを単独で受けることができるようになりました。

※A 銀行 600 万円×1/3×1/2=100 万円
B 銀行 1800 万円×1/3×1/2=300 万円(上限は 150 万円)

本制度は、本制度の施行日である 2019 年 7 月 1 日よりも前に開始したお亡くなりになった方の相続についても利用することができます。共同相続人全員の遺産分割協議がまとまらない場合や時間がかかる場合は、まず本制度の利用を検討するといいかもしれません。

(文責 : 司法書士 佐賀 達也)

本レポートは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については各々固有・格別の事情・状況に応じた適切な助言を求めていただく必要がございます。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的な見解であり、当法人若しくは当グループ又は当法人のクライアントの見解ではありません。

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